究極のスポーツフィッシング@

 

 
自分の限界に挑む。それが究極のスポーツフィッシングなのかもしれない。そして限界は修行とともに変化していく。究極とは釣りを遊びとか趣味とか思っている人には縁の無い世界である。そのような釣りを否定するわけではないが、ここでは無視せざるをえない。離れすぎていて同じ土俵で語れない。

世界の秘境を釣り歩く。これもある意味究極であるが、スポーツフィッシングとは言いがたい。時間と忍耐が必要な世界だが、釣りそのものは体力をさほど消耗しないことがほとんどである。

ただし双方とも情熱は必要である。何が何でもという気持ちが無ければ達成できるものではない。
 
 
 
究極のスポーツフィッシングに挑む。今回は巨大クロマグロを取り上げる。


青森のイチローとは1997年からの付き合いで今年で13年目になる。誰もが知っているとおりマグロに人生を賭けてしまった男である。シーズンになれば連日のように竜飛周辺の洋上に現れる。陸で探すより、海で探したほうが早く見つかる男である。

ただしマグロに賭ける情熱は世界で一番強いだろう。確かにプロの漁師はそれ以上に釣っているだろうが、それは生業としてやっているのであり、捕獲の仕方も効率の良さを最優先する。

イチローはルアーキャスティングでハーネスも使わないで巨大マグロに挑み続けているのだ。巨大マグロを釣るのにスピニングリールを使うことは効率的に最悪ともいえる。

そしてイチローは開発者としてのポリシーも素晴らしい。たいした結果も無いどころか、ほとんどテストもせず安易に他社製のルアーをコピーするメーカーが多い中で徹底的にテストして多くの結果を出して商品化している。これはカーペンターの小西健滋にも同じものを感ずる。そしてこの二人は10年以上の付き合いがあり仲が良い。イチローもことあるごとに小西を称えている。小西もイチローを称えている。俺から見て二人とも尊敬できる開発者であり、アングラーである。

過去のニュース
イチローが131キロ釣った2008年9月
http://grouperboys.web.fc2.com/news08b/ichiro2.htm

イチローが98キロを釣った2008年7月
http://grouperboys.web.fc2.com/news08b/ichiro.htm


そして今年の9月5日に186キロを釣った。しかも186キロは擦れ係だった。胴の真ん中にルアーが掛かっていた。

釣ったその夜(深夜1時頃)イチローから電話があった。「擦れだったので引っ張ることも出来ず、凧揚げ状態で潮に流されて7時間もかかりました」。最初は口に掛かっていたらしい。そして比較的短時間に船べりに寄せたとき反転してまた走られた。そのときにフックが一度外れたような感触があったらしい。そのときに一度外れたルアーが胴の真ん中にフッキングしたようなのだ。
俺「186キロの擦れなんて想像もできないよ。擦れの40キロでも潮の速いところでは地獄だよ。それが竜飛で186キロなんて、口に掛かった300キロを釣るより大変だと思うよ」

7時間10分、ハイドラグで耐え抜いた。キャスティングロッドでドラグ15キロ以上かけてハーネス無しで7時間ファイトは体力も必要だが、それ以上に折れない心が必要である。中途半端な気持ちでは絶対に耐えられない。
 
 
 

ヒットは午後3時半。

 
 

一度は浮上したのだが、再び走られてからは地獄だった。

 
 

ファイトは暗くなっても続き、夜10時40分にやっとランディングに成功した。

 
 

全長236センチ、重さ186キロ。キャスティング史上、世界最大のマグロである。

 
 
 

マグロキャスティング界の世界の頂点に立つ男である。

 
 
 
 
スピニングリールの限界。俺も今年の8月にニュージーランドで挑んだ。実は昨年挑む予定だったがチャンスが回ってこなかった。同じように国内でも何度も挑戦しているのだがヒットすらない13年間(小さいのは数え切れないほど釣ったが)である。巨大クロマグロは釣り上げるのも大変だが、巡り会うチャンスも大変に少ないのである。

挑んだ海域はマグロのアベレージが250キロのニュージーランド南島である。

1回目は8月7日だった。
 
 

港の近くの公園でプラクティス。ドラグ18キロで何度も練習した。

ロッドが短いのでキャスティングロッドに比べて負担が少ない。

 
 
 

ところが300メートル以上も走られるとドラグは30キロくらいになって
しまった。18キロではさほど曲がらなかった竿が弓なりになった。

※ドラグはラインを含めたスプール径で変化する。半分の太さになるとドラグは2倍になる。

 
 
 

30キロのドラグでもマグロはジリジリとラインを引き出していった。

ラインの角度がこんなになる光景は俺自身見たことが無い。

 
 
 

スプールがラインローラー側に歪んで接触している。

 
 

どうにもならなかった。最後は船べりにラインが触れた瞬間ブレイクした。

 
 

ファイティングタイムは13分だった。

直後にドラグを計ったら25キロのバネ計りを軽く振り切ってしまった。

 
 

そして2回目の挑戦を決めた。

「勝つまで!」

 

 
 

 

続く

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